朝刊からの感想



ペンネーム:MMさんが、お寄せくださいました。



朝刊からの感想

by ペンネーム:MMさん
 朝日新聞5月11日朝刊の、「私の視点」コーナーで東京大学大学院の神田順教授が「まちづくり、建築基準法見直しが先決」という表題で、現在の建築基準法と、来年の通常国会で政府が成立を目指している「住宅基本法」の問題点について論じている。
 「住宅基本法」は、住宅産業や住宅金融などを活性化するのが目的らしいが、建築業界は昨今、建築関連法規がつぎつぎと作られ混乱が生じているのが現状であると指摘し、次のように述べている。「基本法と呼ばれる法律は理念と政策の原則をうたい、社会のあるべき方向を示す物で……そのこと自体に問題はないが、関連法規の間で整合性が保たれないまま導入されては、混乱を助長させるばかりだ」と述べている。そして、「これまで住宅の性能は『建築基準法』が決めてきた。1950年に制定されたこの法律は戦後の何もない時代に国民にいかに建築物を供給するかを主眼とし、建築の最低基準を定めたものである。……ところが今や住宅の数は足りている。必要なのは今ある建物をいかに維持し保全するかであり、環境対策も欠かせない。にもかかわらず、建築基準法は拙速な改正で詳細規定ばかりが増し、専門家ですら全貌が把握できない一方で、責任の所在が見えない。」とある。神田教授らは03年8月に「建築基本法」の制定を目指す準備会を発足させ、違反が放置されがちな建築基準法を根本から作りなおす事が「住宅基本法」を制定する前になすべき事だと主張している。そして最後に、さもなくば昨年から施行された「景観緑三法」が無駄になるばかりでなく、美しいまちなみどころか、再び「最低の」基準の住宅の大量供給になってしまうのではないかと危惧している。
 神田教授の心配は、長谷工マンション問題を抱える各地で現実のものとなっていると言える。「長谷工の建物は建築基準法に違反している」というそれぞれの裁判の行方が、この国の住まいのあり方、地域や環境、景観との共存の可能性を決めることになる。